「わりい」と「つまらん」、「ならん」

 大分に赴任している同僚から「大分では、『〜しなくてはいけない』『しなくては駄目だ』を、『〜せんと、わりい』というね。あれは、大分独特の表現だな」と言われた。そう言われて、ハッとした。大分でも「いけない」という意味の「いかん」、女性言葉では「いけん」を使うことは使う。しかし、比較的広い年齢層で「〜せんと、わりい」を使う。ごく当たり前の表現だと思っていたが、標準語にはない表現だ。

 
「そんなことをしては、いけないんだよ」を、大分では「そげんこつぅ、すらぁ、わりいが」という。女性言葉では「わりいわ」、「わりいがえ」というところだろう。「それは、良くない」という場合も「そらぁ、わりい」と言う。
 「〜してはいけない」も「〜すらぁ、わりい」となる。
 
「今日の内にこれをしておかなければならなかった」は、「今日んうちぃ、こるぅ、しちょかんと、わるかった」という。「わりい」という言葉には、「義理を欠く」とか「人に迷惑をかける」といった罪悪感が込められているような気がする。

 標準語では、「悪い」は「良い」の反対語であり、善悪の悪の意味で使われる。また、「そんなことをしてもらっては悪い」という意味で使われる「わるいね」のように、「気の毒だ」の意味で用いられることもあるし、軽い謝罪の意味で「悪かったね」と使われることがある。
 大分でも「気の毒だ」の意味で「わりいなあ」「わりいわ」と言うことはあるが、むしろ「きのどきぃ」(気の毒だ)を使うことが多いように思われる。

 一方、やはり「駄目だ」という意味を持つ言葉に「つまらん」がある。
 標準語の「つまらない」「つまんない」は、「面白くない」あるいは「取るに足りない」という意味だ。
 大分でも「つまらんのお」と、「面白くない」の意で使うことはある。しかし、「つまらんやっちゃ」(つまらない奴だ)と言うと「駄目な奴だ」という意味になり、「あいたぁ、つまらん」(あいつはつまらん)は「あいつは駄目だ」という意味となる。
 また「つまらんごと、しちしもうた」と言うと「駄目にしてしまった」「使えないようにしてしまった」という意味だ。

 さらに「ならん」という禁止語もある。「そげなこたぁ、言うちゃならんど」は、「そんなことは、言っては駄目だぞ」という意味である。これは相手に対してその行為を禁止あるいは制止する際に使用する語だ。
                                                    (20131120)

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